物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

逃亡者みたいだ

薄暗い店内にはゆらりと海水魚が泳ぐ大きな水槽があった。青白い光が反射して天井が揺らめき川の流れのように見える。向かいあう色白の君の頬も青く染まり別人みたいに冷たく見えた。慌てた僕が君の存在を確かめるように頬を触り髪を撫でると君は微笑んでくれた。何時までも可愛い女だと僕は思った。青山にある穴蔵のような店で僕らは会った。食事をしながらもお互い会話らしい会話はしなかった、僕は珍しく冗談を言わこともなかった。そういえば彼女と過ごす時には僕は殆どしゃべらない、気を使うことなく、無理をしないそれが許されるから楽だった。

人目を忍び逢瀬を重ねる僕らに安息の地をない。二人とも現実から目を背けて明日なんて来なければ幸せだと思っている。この瞬間、この夜が永遠に続けばと本気で思っていた。

僕らの辿る結末は判っている、でも気がつかないふりをしていた。

僕らは難しいことは考えない。二人でいると楽しくて切なくて、安心して心を預けて過ごせるから離れられない。

駄目な奴らだよなと君に告げると

「ごめんなさい」と小さな声が返ってくる、謝らないでくれと言うと、君は再び「ごめんなさい」と告げる。