物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

星月球

僕がほんとうになりたいものはね、流星雨の降った後の浜辺に降りてさ、海の中から星の欠片を拾い集めてランプを作る職人なんだ。そういったものに僕はなりたいんだよ。馬鹿げてることは知ってるよ。でも、ほんとうになりたいものといったらそれしかないね。J.D.サリンジャーの台詞を真似て、彼女にそう話すと

ライ麦畑でつかまえて、みたいなお話しね。ロマンチックだけど難しいわ、そんなこと本当に出来るのかな」

市販のLEDは強く直線的で刺すような光だけど、僕のランプは弱いけど優しくて包みこむような灯りなのさ。残念なのは一週間も明かりが続かない。

心が傷ついたり、寂しい時に使うとヒーリング効果があって、痛みが和らぐのさ「~癒やしのランプ~星月球」っていう名前にしようと思っているよ。

何万年も宇宙を旅して地球に落ちてきた星との出逢いに君は感動しない、巡りあいや運命を感じないかな。

「ふーん、あなたの熱意は分かるけど、うん、じゃあ私ためしにひとつ戴こうかしら」

と悪戯ぽっく彼女は笑う。

ありがとう、ちょうど昨日海で拾って来て作った試作品があるんだ、星屑は水に落ちると小さくなるので、灯りももう僅かしか光らないけど、我慢してね。

「良いのよ、無理しなくても、素敵なお話しをありがとう、そんなランプがあれば良いわね…」

彼女の言葉を遮るように、僕が懐からランプを取り出すと、彼女は、「えっ」と口を両手で押さえてしばらく僕の手にあるランプを見つめていた。

ここには、ランプのソケットが無いから、商売仇のLEDで光らせるよ。あまりきれいだったから、海に映った月齢4.2の三日月ごと掬ってきたんだ。まだまだ改良点はあるけど…

「素敵ね、うれしいわ」

そして、彼女はいきなり僕の頬にキスをするから会話も止まった。

それから僕らは暗闇の中で頬を寄せ合い、淡い光を放つランプを飽きるまで見つめていたんだ。

本当は秘密にしたいけど、今日は特別に皆さんにも僕のランプを紹介するよ。

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市販はしないけど。僕が大切にしている人には渡していこうと考えているんだ。

次はあなたの元に届けようと思うから、しばらく待っていてください。