物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

降る雨に理由はあるか

雨が降る惑星は地球しか知らない。毎日空から雨が落ちて地表を濡らし憂鬱を積み重ねる。グレーの空に蓋をされた世界はテラリウムみたいな造り物で、現実感のない湿った大気はくすんだ匂いを帯びている。そんな世界で呼吸をしながら錆びていく自分が悲しく思えた。

この時期の日本の高温多湿はマナウスに似ていると言ったブラジル人を思い出す。アマゾン川流域の貿易都市、知らない街のアパートの一室を想像し、乾かないシャツを着て腐さりかけのリンゴを齧る、窓の外は雨、倦怠感は加速する。

孤独がもたらす自由を暗闇の中で見つける。輪郭はぼやけ雨に溶けていく。

誰にも触れてもらいたくもなく、誰かを抱きしめたい気分でもない。

氷を満たした冷たい水を飲んで深呼吸をすれば、少しはマシになるだろうか。

寂しいほうがよいのさ、今は独りでいたいのさ、コップの氷を鳴らして風鈴を思う。夏なんて来なければなんて思っている。

雨に煙るネオンサインと遠くの救急車のサイレンに心を奪われる、今宵はそんな静かな夜だ。