物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

梅雨空とカラス

 曇り空の下で鳴くカラスは絵になる風景だ。公園のベンチで夕暮れの時間を過ごしている。暮れゆく空には、ねぐらに帰るカラスが群れ飛び、ゴッホのカラスのいる麦畑の絵を思い出させた。

目を閉じて、湿った風を頬に受けている、汗ばむ額が不快だった。絡みつくのは女だけで十分だと思い、振り解くように首を横に振りため息をついた。

明後日の今頃、僕はどうしているのだろうか、誰かに何かを決められるのは嫌だけど、好き嫌いなど言える相手では無い。運命を受け入れる準備は出来ている。でも、まだ時間はある、少しだけど自由になれる時間だ。

5年ぶりに会う彼女は、5月に生まれた男の子を僕に見てほしいと連絡をして来た。彼女の意図は判らないが、僕には断る理由もなかった。勿論、僕には身に覚えがないから安心している。

彼女が自宅の最寄りの公園を教え、僕は彼女が現れるのを待っていた。子連れの母親が通る度に確認したが、いずれも彼女ではない。日が落ちて人影が無くなるまで待ったが、結局彼女は現れなかった。

僕はやれやれと思ったが、こんな事も面白いと思った。彼女の安否を気にしたが、気まぐれな彼女だから、来なかった理由は、大したことで無いのは想像がついた。僕が唯一後悔したのは、虫除けスプレーを持って来なかったことぐらいだ。女に振り回されて貴重な時間を無駄に過ごす、自分らしいなって思い、噛み締めるように薄く笑う。

 

広告を非表示にする