物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

帰宅

久しぶりに家族が起きている時間に家に帰った。ただいまと言うと、こんばんはと下の娘は答えた。不思議な距離感に苦笑いをする。着替えてリビングのハンモックに二人で揺られ彼女が買いたい洋服の話と夏の旅行の話をした。仕事は多忙で予定は組めず、留守を頼める部下はいない。無理そうだと答えるとシュンと肩を落とした。余裕は時間かお金のどちらかだから、器量のない僕には二つは望めない。

僕は家族を愛している、家庭的であろうとも思うが、家庭に収まることは出来ない。

妻はそんな僕を理解し許してくれるから、甘えてしまうのだ。妻と二人の娘の為には何時でも命を差し出そう、僕が居なくなっても生活に困らない程度の金は用意している。休日以外に時間は余り取れないし、不在による安定を崩したくない。せめて出来ることは金と暴力装置の在処を用意して、脅威に備えることだ。力は正義だろ、愛するものは守り抜かなきゃね。それに人格者ではない僕の価値はそんなものさ。愛情に報いる為に、財産を残すことが僕が出来る愛情表現だと信じている。役割は最低限果たしているつもりだし、それ以上望まれても出来ない約束には応えられない。家族の邪魔にならないように寝室へ移動して大人しく眠る、偽りなき心で家族の無事を祈る。今日はそんな日だ。