物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

夜の風は優しく夏の匂いを運ぶ

週末の雨上がり、青山2丁目から神宮外苑の銀杏並木の下を信濃町に向けて歩いた。

僕の頭には小沢健二の「いちょう並木のセレナーデ」が流れ、秋の黄色に染まる並木道を歩いた過去と新緑の現在を比べ、時間の経過は残酷だなと考えていた。今年の秋には僕はどうしているのかなそして彼女は…遠い季節を思い、暗闇の中で僕は彼女に気づかれずため息をついた。

彼女に手を振り別れた後、僕は少し真顔になって、今宵は楽しい時間を過ごせたと思い、心地良い疲れだと感じながら再びため息をつく。

週末の電車は倦怠と安堵を乗せて家路に向けて人々を運ぶ、酔客の溢れるホームで僕は彼女を思った。彼女に向かってさよならと手を上げたすぐ後に彼女を追いかけ、階段を駆け抜け電車に乗る前の彼女の手を握り僕と一緒に居てくれと言う自分を想像した。僕はそんなことは出来ないと苦笑いを浮かべた。

それは都合の良い女にLINEを送り、寂しさを埋めて欲しいと泣き言を言い出す5分前の話だ。誰にとっても悪い男だけど、これで良いのだと改札口に急いだ。