物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

俺は思うに、たとえばあの子は 透明少女

好きな音楽の話になり、彼女がバンドを組んでいることを知った。

「わたしはギターを弾いている、曲によってはボーカルも」と珍しく控えめに彼女は告げた。僕も昔バンドを幾つか組んでいて、ライブハウスやコンテストに出ていたと話をしたら、演奏の評価を聴かせてほしいと練習スタジオで録った曲を渡された。僕はプロに成れなかった男で半端なまま音楽を辞めた。僕に解るかどうかと断ったが、あまりにも勧めるので聴くだけならとCDを受け取った。

期待もせずに聴いたら、3曲とも僕の好きな曲だったから驚いた。

神聖かまってちゃん「ロックンロールは鳴り止まないっ」大森靖子「絶対絶望絶好調」そして、NUMBER GIRL「透明少女」だった。一曲だけ20年近く前の曲だったのでなぜ?「透明少女」なのと聞くと、向井秀徳様(さま付けだよ)が好きなのと彼女は言う。そして曲への想いが強すぎて髪を赤く染めたんだと告白した。

黒髪の君がねぇ、僕が驚くと「高校生の頃、ひと夏だけ」と、うそっぽく笑った。バンドの演奏は下手で特にドラムのリズムが不安定、それにベースが危なっかしくてコードを追うことが精一杯のアマチュアだった。彼女のギターは悪くはない、キーボードとボーカルはそこそこだった。このバンド何年やってるのと聞くと、半年と答えた。それで君たちは何を目指すの?

「暇つぶしよ、別に何かを目指してる訳じゃない、あんたみたいに本気で何かに成ろうとしている人達じゃないんだ、みんな」と寂しそうに言う。

良かったよ、選曲が最高だね、演奏はともかく凄くロックだ。ストレートで爆発的で分り易すぎる無垢な叫びを聞かせてもらったよ。と感想を話すと、

「ありがとう、あんたは、解ってくれる気がしたよ」とほっとした顔になる。

演奏が入ったCD から音源をコピーし、スマホに入れて毎日この下手くそなバンドの演奏を聴いている。

毎回同じところでミスをするベースに微笑みながら(僕はベース担当だった)「透明少女」を懐かしく聴いている。

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気づいたら俺はなんとなく夏だった♪