物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

突然に冷たくなるわけ

僕と過ごすと女の子はみんな笑顔になった。デートの前よりも必ず彼女達は幸せそうに微笑んで、別れ際は少し切なそうな顔をする。

「今日はありがとう、また会おうね」と手を振り送り出して、背中が見えなくなるまで後ろ姿を見送った。そこで僕はスイッチをオフにする。彼女達と束の間の幸福を共有した後は、反動でテンションは急降下し、少し怖い顔つきで車窓のネオンを睨んでいる。役目は終わった。明日また別の人生が待っている。

街にやって来たサーカス団は、興奮とスリルと、そしてもの哀しさで観客を魅了する。最後はテントを畳んで街を離れる。後には広々とした草原が残り、風に吹かれ、熱狂と記憶は季節とともに忘れ去られる。僕はそんな気分で人と会っている。一期一会の気持ち、良い言葉だ。

人間には役割があり、相手に対する役目を果たした後は、決別し自然と離れていく。人が生きたというのは誰かの人生に自分が何らかの影響を与えるということだ。僕と出会う前とその後では何かが変わる、相手が気づかなくても僕には変化が分かるから、その結果に満足したら僕の役割は終わりだ。次第に距離を取り離れていく、軌道を振り返ることはしないのだ。さようなら、良い旅を。

相手は突然、僕が興味を無くしたことに驚き、なぜなのかと僕の豹変に戸惑う、そして最後はいい加減な奴だと僕を詰る。その頃には僕は次の誰かを見つけて、愛を配り同じように微笑みデートの帰りに愛しい背中を見送っている。そんなふうに、全てを与えて少し奪うという人生を繰り返し僕は生きている。

何時からそう思い、人と接して来たのかなんて、忘れてしまった。僕自身も必要が無いからと捨てられ、冷たくされてきたから、そんなものだと思っている。人は出会う人とは出会い、別れる人とは別れるものだ。去るものを追うことは難しく、やってきた新しい女を抱き止めることのほうが容易いのだ。だから僕は本気で人と接し、今日が最初で最後だと覚悟を決めて逢っているんだ。そんな決意を僕は持っている。ごめんね、僕に残された時間はわずかなんだよ、嫌いに成ったわけではない、運命の人は君ではなかった。