物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

海に阻まれた虜の島

月齢の若い月はもう西の空に沈んでしまった。さざめく星の下で独り判別のつかない水平線を睨んでいた。此処ではない何処かへ行ってみたいという逃避願望にかられ、海沿いの駐車場に車を止めて太平洋の黒い塊を眺めていた。

星月夜の浜辺へ過去に捨てた、感情や想いが打ち上げられていないか探しに来たが、風が強くて車から降りることはしなかった。

家には帰りたくないと遠回りをした結果、海まで来たことを後悔していた。何処かへ行ってしまいたいのと、何処かへ行きたいというのは異なる事で、「約束の地」を求めエジプトを出たモーセとアロンの苦難の旅を思えば、僕の受難はまだまだ足りない。例え土地を離れて、誰かと暮らしても絶えず魂は流浪し漂うのだと考えていた。やはり僕には辿り着く場所はないがまだ帰る家はある。こうして深夜に寝静まった自宅に帰り朝を待つだけの時間を過ごしている。