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物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

悪の化身かもしれない

「お前は馬鹿か、お人好しにも程がある」と僕はいつもオヤジに叱られていた。心に垣根を設けないから、上も下も右も左もなく誘われれば誰とでも会うし申し出を断るにも会って相手の顔を見て言うことにしている。問題を有耶無耶には出来ず始末を付けたがる性格は生涯変えられず、(自分で気に入っているんだ)時と場合によっては修羅場を演出する事がある。例え逃げたとしても追って来るような相手には対峙して退けないときりがない。そして僕は自分を勘定に入れない男だ。仕事も恋愛も相手が良ければそれで良い。相手が僕の提案に喜んだり、リラックスして楽しんでくれるのが好きなんだ。同様に藁にも縋るクズな奴らに引導を渡すことも義務だと思っている。破滅型の性格の僕は世界の終わりを望んでいるのだから、命も惜しくないし脅かしにも屈しない。先週末フィリピンから僕に会いにやって来た男は、亡くなった名古屋のオヤジが面倒を見ていた男達の一人で、潰した会社の債権と女性問題で日本に居られなくなり、オヤジがマニラに逃がした奴だと聞いていた。僕は彼が切り出した無計画な甘い儲け話の申し出を断り、これ以上オヤジの家族の周辺を騒がして迷惑をかけるなと咬んで含んで言い聞かせた。そして僕はもう金持ちではないと、大金を失った顛末を説明すると、急に僕に興味が無くなったのか、都合がつく相手を紹介してくれと泣き言を言いだした。僕は優しく「お人好しと呼ばれる僕がそんな奴は居ない」と言っているだろと答えると、男は沈黙した。

それからオヤジの思い出話を30分程して男とは別れた。彼もこの先は駄目だろうと思い、ここ2ヶ月で見限って捨ててしまった奴らは3人かと、感嘆のような溜め息をついた。

「オヤジはあんたを頼れと言っていた」前に沖縄から来た男も同じ話をしていた。オヤジは自分の大切な娘を不幸にした僕のことを嫌っていたのかと考えた。いや本気で後を継いで欲しかったのだと考え直し、やはり大きく溜め息をつく。