物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

お話にはならない物語

「私は塔に閉じ込められているの、高窓を見上げて王子様が助けに来てれるのを待っているのよ。早く私を救い出して、これから先は何時も傍に居て、ずっと私を好きでいて、決して嫌いにならないでね」

「待っていて、もうすぐ君を解放するから、捕らわれのプリンセスを自由にするのが僕の務めだ、そして二人で千年続く王国を創ろう」

未来を夢見る二人はあらゆる妨害や苦難を乗り越え永遠の愛を誓い、いつもいつまでも二人は一緒にいました。めでたし、めでたし。

そう御伽噺の様には人生は続かない。日々の生活は泥臭く、僕の周りは調子が良くて、自分が一番大切な利己的な人間ばかりだ。僕は世界の理を受け入れて、自分の能力をお金に換えて、規則通りに税金を支払い、魂の飢えを凌ぐ為に煌びやかな誘惑や、価値の伴わない詰まらない約束に時間とお金を遣うのである。人よりも良い生活、選ばれた者しか行けない場所やサービス。金が無ければ負け組だと言われる世界。そして弱いものがより弱いものを叩く残酷で危うい世界。

そんな世界の果てを漂流していた僕は、美しい君と出会った。君は髪が長くて良い匂いがした。色白で折れそうな肩をした女の子だった。そして僕は君を傷つけ、僕らの物語はお伽噺のようにハッピーエンドでは終われなかった。でも君と人生を共に過ごしたことを嬉しく思う、今までの生活に感謝をしている。あの冬の日に僕に会わなければ君だって違った人生を送っていただろう。僕はただ慰める言葉もなく、君の静かに深い哀しみに寄り沿い、ロクデナシの自分を責めた。千年たったら君は僕を許してくれるかな、許されなくても君は僕を忘れないでいてくれたら気が楽になるのだけど、無理な話だ。