物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

放浪者の気持ち

「私、中学生の頃に部屋の天井を見上げて、ここは居心地が悪い場所だなって思っていたんだ」

僕も一緒だよ、何時でもここから逃げ出すことを考えているよ。根を張って生きるなんて到底無理で、なんだか落ち着かないんだ。

「そうよね、あれはダメ、これもダメなんてとても窮屈じゃない、私は自由に生きたいし、縛られるのは嫌なの、実家なんて守りたくないのよ」

そして彼女は猫になりたいと言う、猫は犬とちがって吠えないし、鎖に繋がれて寒い夜を過ごすこともない、猫は陽だまりの場所や気持ちが良い風が吹く場所を一番知っているからと語る。

「みんなに可愛いがられて生きていくの、だけど何時か突然居なくなるのよ、いつものように出かけて帰ってこない」

切ない話だね、僕は君と付き合いが長いからよくわかるよ。僕も同じさ、ふらりといなくなる日を計っているんだ。君にも内緒にして何処かへ行ってしまおうと考えているんだ。

「悲しいわね、愛されないと寂しいけど、愛されすぎると苦しいでしょ、どっちも耐えられないのよね」

そうさ僕らには安住の地はない。僕らは似た者同士で、同じ価値観を共有している。でも、僕らが一緒に暮らしたとしても、いつかどちらかが出ていくことになる。そんな考えが頭に浮かんだけど僕は彼女には話さなかった、彼女もそれは心得ている。永遠とか遠い話より今日、美味しいご飯が食べたいだけなんだよね。

「そうよ、私は美味しいものを食べさせてくれる人に甘えるのよ、にゃあ」

彼女は笑い僕も笑った、僕らは未来を信じない、約束は何時も果たされなかった。信じられるのは明日まで、そのあとの事なんて誰にも分らない。ねぇ僕らは不完全でお互いの身体に空いた穴をふさぐように抱きしめあっているんだよ。そしてなんとか、本当になんとか生きているだよねってと僕が言うと。

「今頃何よ、私以外にあなたのこと理解できる人なんているの、私のこと一番分かってるのはあなたなんだから、それに私は好きな人にしか甘えないのよ」と楽しげに笑った。君には敵わないといつも思い、全てを受け入れてくれる彼女に感謝をしている。

 

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