物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

懲りない男

仕事だと嘘をついて、家族でもなく恋人でもない女と師走の街で逢った。初めて顔を合わせた彼女はとても緊張していた。僕は待ち合わせの駅で待っていた彼女に手を挙げて微笑んで始めましてと握手をした。たちまち彼女の顔が赤くなった。歩きましょうと今度は左手を引いて冷たい彼女の手が僕の体温と同じ温度になるまで放さなかった。公園の中にあるカフェに誘い、1時間ほど話を聴いた。僕に会いたいと伝えてきたのは彼女だった。僕は求められればどんな人間とも会ってきた、たいていはお金にまつわる話しになる。場合によっては途中で席を立ち帰ってしまうこともある。今回の相談の話も深刻で終始ため息しか出なかった。それではと話しを切り上げ話は終わり会計は彼女が払った。結果彼女とはもう遭わないだろうと思い連絡先も本名も告げず席を後にした。俺はいったい誰で何をしているのだろうと一人街を歩きながら考えはしたが、こんな生き方は変えられないと自分で答えを出して、可笑しくもないのに少し笑った。

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