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物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

マフラーの頃に半袖の季節を想う

濁った瞳にも映る世界は美しく、ひどく危うく儚げで虚ろに見えた。僕の世界の色彩は薄く輪郭がぼやけていて、まるで海の底から空を眺めているように揺らいでいる。浮遊感に戸惑い身体が少し浮いてるようで足元を確認した。まだ地に足はついているし、背中に羽は生えていない、そもそも僕は天使ではないか。冬の朝に、運転席に背中をあずけて目を瞑り何時かの夏の高原に吹く風の音を聞いている。草を分け木々を鳴らす風は今何処に吹いているのだろうか、太陽は眩しく木々はざわめき、テラスの影は揺れる。冬は夏に恋をして、夏は冬に憧れている。遠い世界は僕が生きた世界だ。

漠然とだが死を背負って生きる覚悟はいつの日か常態化して、フラットで起伏のない道を何処までも歩いていく気分になる。視界は悪く先は見えず足元の感覚だけで道を探している。人生を終える恐怖はないが諦念は心に宿している。今日は生きるにも死ぬにも最良の一日になりそうだ、登る太陽の後ろにある夏の世界に戻る日を夢見て生きている。