物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

ぼくを探しに4

午後の日差しが波頭を光らせていた。照り返しに目を伏せて人気の無い秋の浜辺をゆっくり歩きながら話をした。

「あなたの話は本当なの、あなたはなんでも一生懸命だから想像がつくけど、そんなにお金を儲けて何がしたかったの」

責める訳ではなく彼女の口調は優しい、

ベンチャーキャピタリストになりたかったんだ、仕事でどうしてもお金が借りれない社長たちを見てきて、僕が魅力的な事業に直接投資し、良い製品良いサービスを世の中に知らしめたかったんだ、社会が良くなるような素晴らしい取組にお金を提供することで喜ぶ人が増える世界にしたかった。とりあえず金融資産で10億円を目標にしていたんだ、他の二人の理由は判らないけどね」

「ふーんあなたっていつも人の事ばかりね、呆れちゃうほど自分が無い人」

「甘えて我儘を言うのは君ぐらいさ、自分の為だけには頑張れないよ、我欲の為にだけお金に群がるなんて虚しいだろ」

「不思議な人ね、でもそこがあなたらしいわ」

夕暮れは早く、岬の入口にあるカフェの灯りが柔らかく燈る。

「あなた、私は昔の私と違うのよ、私に何がお望みなのかしら」

「一晩過ごしてくれと言いたいけど、それは無理な話だから、手を繋いでくれそして...」

「分ったわ、何も言わないで」

彼女は優しかった、でも僕は彼女が僕の無くした半分では無いことに気が付いてしまった。彼女は別の欠片と丸くなって生きている。

途切れぬように会話を続けながらも、僕はその日彼女に会ったことを後悔していた。長い不在の時間は人が変わるのに十分な時間で、ガラス越しに会話をするようなもどかしい感覚が僕の心ををきりきりとねじ上げていた。

「ありがとう、今日は帰るよ、これ以上はもったいない」

「どうしたの、急に」

これ以上憐みを乞う僕は惨めだなって思い、彼女を最寄の駅まで送り僕らは別れた。

その日を境に彼女と連絡を取ることを辞めてしまった。

「夢を見ているうちが一番幸せなんだ、現実に起こることは不幸なことばかりだ」

誰に聞かせるわけでもなくひとりごち、僕はせめて生きられるなら生きてみようと思った。僕の半分、ぴったりな欠片に出会う日をまでは夢を見ていようと心に誓った。

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