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物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

いちょう並木のセレナーデ

「こんなに面白くて、楽しい人で何でも一生懸命なのに、誰もあなたを認めてないなんて不思議ね、それはあなたの思い過ごしでしょ、皆あなたが大変だなんて考えていないわ、感覚的に冬は寒い、お腹が空いた、口うるさい上司が嫌いってそういった自然な感情で、良いことをしても過去は過去よ」悩みを語った後で彼女は手をぎゅっと握ってくれた。

挨拶もしてくれないのは淋しいよ、蚊帳の外にされているのは辛いよ、

「そう言ってもあなたは、皆を助けるし見捨てることなどないでしょ、あなたみたいに気が利いて、好き嫌いを面に出さずにいられる人はなかなかいないし、皆あなたを認めているわ、それに悪い人にはなれないわ、あなた苦労してるから誰にも優しい人でしょ」

なぜ何もかも分かるんだ君は

「いまさら聞きたいの」

いや悪かった

「11月までは愚痴を言っても良いけど、12月になったらもうだめよ、それに皆に期待をしてもだめ、孤独を受け入れなさい、それも給料の内よすぐ慣れるわ」

僕もそう思っていたんだよ

「何があってもあたしは味方よ、地獄でもどこでも一緒に堕ちていくわ、しょうがないから付き合ってあげる」

僕が将来パリに住むためにも君が必要だよ、君ほどフランス語喋れないし

「本気にしちゃうわよ」

彼女は笑いため息をついた

「本当に困った人ね、病弱の私に希望をくれるなんて、確かに将来そう出来たら良いわね、楽しみね」

少し照れた僕は彼女の少し前を歩いた。いちょう並木は夕暮れの低い日差しを受けて金色に光っていた

「素敵ね、空も青い、気持ち良いわ」

君の方が素敵だよと考えが浮かんだけど言葉にしなかった、彼女には僕の気持ちはお見通しだ。

「やがて僕らが過ごした時間や 呼びかわしあった名前など いつか遠くへ飛び去る 星屑 の中の ランデブー♪」古い歌を口ずさんだ

「懐かしいわね、晴海埠頭に行ったこと思い出したわ」

そのまま、言葉もなく寄り添った僕らは暫く公園を歩いた。やっぱり君がいないと真っ直ぐに歩けない。街のイルミネーションに飾られた初冬の東京は素敵な街だと初めて思った。