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物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

待ち人来たらず

水曜日にル・コルビジェが設計した上野の美術館で待ち合わせの約束をした、約束の時間の前にロダンの有名な彫刻の前で地獄について考えていたら、彼女からLINEで連絡があり

「ごめんなさい、体調が悪くて、頑張ったのだけど...今日は行けないわ」

「うん、それは残念だけど気にしないでね、君の身体が心配だから」

「元気な人じゃなくてごめんね」

「良いんだ、昔みたいにメロンを持ってお見舞いに行くよ」

「嬉しいけど、寂しい」

暫くのやり取りの後、僕は独りになった。周りの人から見たら今までも独りだったのになと思って少し笑った、希望を失うことで僕は深い孤独感を抱き再び地獄の門を眺めダンテの神曲に書かれた有名な文言を思い出した。

「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」か、

その後、独り神田で蕎麦を食べ、神楽坂のカフェでエスプレッソを飲んだ。東京は雨が降っていた、秋から冬へと季節を渡す雨。坂道の路地を下りながら

「パリには雨が似合うわ、濡れた石畳と霞む街路燈が素敵です」

彼女が昔パリから送ってきた言葉と画像を思い出した。

「神楽坂はモンマルトルに似ている」誰かがそう言い、その気になって街を歩いたこともあった。傘を持つ手は冷たく駐車場は遠かった。

家に帰ったら暖かい風呂に入ろう、家族は寝ているだろう、やはりどこにいても独りだな、でも悪くはない気分だ、いつか死ぬ日はやっぱり雨の日が良いなと考えていた。雨の朝パリに死すだな、それなら素敵だ悪くない。

 

 

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