物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

九月の雨

フロントグラスの外側は海底に沈んだ世界のように水に浸って滲んでいた

車内に満ちた丸く湿った空気を吸い込み

「雨の降る星も悪くない」と他の惑星から

来た旅人のようなことを呟いた

雨でも日が暮れ、今日が終わる

人を待ちながら駅に吸い込まれ、吐き出されていく傘の色を数えていた

カラフルな傘に地味な女、折り畳み傘と巨漢の男、皆つまらない顔で何処へと急いでいる

帰るのか、出て行くのかはその日の気分次第で決まるし、旅立たず終わる旅もある。

一回も街を出たことのない旅行代理店の職員みたいな気持ちになった。

彼は旅行を企画するだけで満足した。仕事以外の時間とお金は家族の為に費やされる。

取り留めのない思いは巡り、待ち飽きた僕は理由もなく車外に出て雨が降る先を睨んだ

雲の上には幸せがあるのなら、僕は地上に堕ちた不幸を拾い集めて生きていく

 それが僕の使命なら仕方がない

駅の階段を荷物を持った妻と娘が降りて来たのを見つけ右手を上げた。左手にある2本の傘をぎゅっと握り彼女達に「おかえり」と笑顔で応えながら歩みよる

 

 

 

 

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