物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

電話の声はささやきまじり

「あなたに会うと悲しくなるの」

そんな寂しいことを言うなよと電話の向こうの彼女に告げた

「あなたには敵わないって何時も思うから、あなたは楽しい人だし会うと元気になるから」

ありがとう、お役に立てて嬉しいよ

「でも、私はあなたに何もしてあげられないし、貰ってばかりで返せてない、悔しい」

違うよ、僕も君と会うと元気になるし、お別れした後で寂しくなるよ、同じ気持ちさ

「私何時も独りでご飯を食べているのよ、テレビを見ながら、時々テレビに話しかけたりしてるの、悲しいわ」

僕は殆どテレビは見ないけど、お新香を噛みながら、君はポリポリと良い音がするな、味もしっかりして歯ごたえも絶妙だって話しかけたりしてるよ、一緒だよ

「おかしな人、いつも優しくて相手を気遣いすぎよ、ぜんぜん敵わないわ」

君と争っているわけではないよ、城が落ちる最後まで君の味方だし、僕にはない君の良いところを5つ言えるよ、その一、君の作る料理は美味しい、その二、フランス語が喋れる、その三、手話通訳者で困ってる人の役に立ってる、その四、良い匂いがする、その五、幾つにもなっても可愛い、その六、腕を組むと横乳が当たってドキリとする

「バカね、5つじゃないし、最後の方はあなたの感想じゃない、ほんとに困った人ね」

呆れて君は笑いだす

僕は君が笑ってるのが一番好きだよ

「ありがとう、元気にしてくれていつもありがとう」

電話の向こうで彼女の声が詰まり泣いているのが伝わるまでの間

僕は防波堤の上で日がな一日水平線を眺めながら寄り沿う二匹の猫のこと

を考えていた

 それが僕らがいつか夢見た未来の姿だからだ