物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

Walk Don't Run

心も体も傷だらけで

捨てられた子猫みたいに

愛を乞い優しくしてれる人を求めて彷徨う日々は続いた

久しぶりに逢った彼女と会食のあと

お濠端を歩いてベンチに座った

丸の内に立ち並んだガラスの高層ビルの中を動くエレベーターを眺めていると

「東京の真ん中でも星が見えるのね、

 晴れて良かったわ、あなたにも会えたし」

彼女は空を見ていた、連なるビルの上を雲が飛んでいく、その先に確かに星が見えた

僕、酷く転んじゃってさ、抱えてる心の痛みと身体の痛みがやっと同じになったよって笑うと

「バカねぇ、わざとそうしてるとしか思えないわ、不器用で困った人」と慰め、彼女は手を握ってくれた

優しいね、でも君は大丈夫かな、食事も殆ど採らなかったし心配だよ、疲れて辛そうだよ、外の風に当たらない方がいい、駅まで送ろう

「ううん今日は元気よ、こんなにおしゃべりするのも久しぶりだし、家で寝てばかりいたけど、あなたに会うからスカー トも新しく買ったのよ」

すごく似合ってるよ、とても素敵だよと腰に手をまわすと

「ダメよ、判るでしょ困らせないで」

たしなめられても僕はきかない 

おでこのキズをキスで治してくれよ

「そんな冗談を言う余裕があるうちはまだ大丈夫ね」 

と言ってベンチから立ち上がり背伸びをした

「あなた私がいなくなったら泣いてくれるかしら」

背中を向けて小さく彼女が言った言葉を聞こえないふりをしてごまかした

僕はこんな男だから、叱ってくれる人がいないと生きていけないんだよ、君が必要なんだ、僕みたいに弱っちい男は独りじゃダメなんだ

「色々背負い過ぎなのよ、自分のことだけ考えてわがままになって、嫌われたって良いじゃない、あなたが全部助けてあげられる訳じゃないでしょ、と言っても無理なのよねあなたは」

 うん、無理みたいだよ困った人だから

「走る人は、追いかけているのかしら、それとも逃げているのかしら」

皇居を周るランナーを見ながら彼女は呟く

どちらも一緒さ走ることに意味があるのさ、走れば状況は変わっていく

「あなたは走らなくてもいいから、一度止まってゆっくり周りを見てから進むのよ、私は走れないし、歩くのも遅いわ、あなたを見ていてあげるから無理はしないでね」

君はいつも優しいな、僕はこの星に生まれて来てよかったって思うよ

「あなたはいつも大袈裟よ、でも嬉しい」と彼女は笑った

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