読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

僕のからだなんか 百ぺんやいても かまはない3

その人は怖い人だと聞いていた

一本気で偏屈で協調性がない人だと皆は噂した

「君はどこの生まれだ、この辺の出ではないな

 父親は何の職業をしている」と挨拶も早々に

彼は僕に質問をぶつけギロリと鋭い眼光で睨み

タバコの煙を天井に向って吐いた

厄介な人物だ、言葉尻を取られないようにしよう

僕は簡潔に自分の出自を説明し反応を待った

「君は頭が良いな、そう言われるだろうが、どちらかと言えば利口な方だな」

感想のような、謎かけのような事を口にし、暫く黙る

禅問答のように緊張した時間が過ぎ

「時に金は命の次に大事だろうか」と

いきなり、僕の過去を暴くような質問をする

「顔色が変わったところをみると、君は金は命よりも大事だと考えているな」

見透かされたような口ぶりに頭を殴られたような衝撃を受け、僕は絶句した

いずれ僕の運命を変えることになる彼は、人の心の柔らかい部分を捕まえる噂通りの怖い人だった

洞察力に優れたその人との出会いは強烈で僕は終始圧倒された

この人には一生敵わないと思わせる人物との出会いはこんな感じで始まった

 

その後、なぜか彼に気に入られた僕は、度々呼ばれその家に出入りするようになった

ある日のこと

「ところで、この人は今日スリランカ大使館に呼ばれて帰ってきたところなんだ」

 彼の隣には、僕の見知らぬ女性が同席していた

その人はTですと名乗り、髪は短く意思の強そうな口元と目に力をもった女性(50歳過ぎだろう)だった

スリランカでは、世話になった人へ感謝の気持ちを表す際に、

 象を贈る習慣があるという」

そんな話があるのかと考えていたら

「象を頂いたら日本で飼うにはどうすれば良いかな」

検疫とかあるので難しいのではないですかと口にすると

「動物園には象がいるな、象を日本で飼うにはどうすれば良い」

彼は僕に日本で象を飼う準備をしろと言っているのだ

やれやれ困ったものだが、断れるはずもない

その日早速、関東地方にある動物園のいくつかに電話をかけ

その度に電話の向こうの担当者を呆れさせた

「いたずら電話は止めてくださいと」

ある施設の担当者は冷たく言い放ち電話を切った

親切に情報を教えてくれた方の話を整理し色々と調べるうちにやはり検疫関係に高いハードルがあることがわかった

絶滅危惧種に関わり、ワシントン条約の条文を自分が読む日が来るなんて僕自身思いもよらなかったし、問合せ先の経産省の担当者も思いもよらぬ素人の質問に困っていた

象をめぐる騒動は思わぬ方向に転がっていく