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物語は終わっても人生は続く

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。

朝の光が全てをとかす

夜の静寂に流した言葉は、朝日を浴びて消えてしまった。 所詮、言葉は不自由で伝えたい気持ちを越えることはない。 嘘は言っていないし後悔も反省もないが、羞恥心はある。僕にだって恥ずかしいという感情はある。 目が覚めて髭を剃り、紅茶を飲み、歯を磨き…

おやすみラブリー

ラブリー眠る前のひととき、美しく空に浮かぶ月を見ていたら急に君に会いたくなったよ。僕は今、君のことを考えながら月灯りを頼りに君を攫いにいく計画を立てていたところさ。とりあえず海まで逃げて、西の海に沈む月を二人で眺めようか。これからのことは…

断捨離

最後に「さよなら」と打って、バックスペースキーで削除し「おやすみ」に変えた。 「もう興味がなくなったんだ」は、「君との関係を大切にしたいから、少し時間を置いて二人の距離感を確かめよう」に。 「次のデートはどこに行こうか」は、「もう逢うつもり…

好きになれない

みんな、一番好きなのは自分で、自分が得をすることだけにしか興味がないみたいだ。 それなのに他人の、噂話や陰口が好きで、自分の欠点へ至らなさには目を背けていたいんだな。上下や優劣、肩書きと財布の中身で人を計る価値観、利用できるか、できないか、…

月が綺麗なのは満月の夜だけじゃない

寒風吹きすさぶ、駅のホームで電車を待ちながら、君の白いうなじのように白くて遠い月を眺めていた。どうせ手が届かないからとカメラで撮って僕の懐に収めてから、電車に乗った。 そして車窓に映る疲れた男の顔に気がつき、ヤレヤレと大きなため息をついた。…

粉々になって弾ける前に

ダンスフロアのダウンライトの光を浴びて、きらきらと輝くクリスタルガラスは、美しいけど傷つき易い君の心みたいだと思った。 一度ヒビの入ったグラスは愛情を並々と注いでも満たされぬ事なくこぼれ落ち、君の渇きを潤すことは出来ない。 僕が抱きしめれば…

毅然として冷静に打ちのめす

何にせよ溺れるほど夢中にはなれない、僕は何時でも何処かで振り返り、岸を確認して戻れる距離しか泳がなかった。 破天荒な人生を標榜しながらも、身を滅ぼす程はのめり込めない。同じゴールを目指して隣を泳ぐ誰かが急に沈んでも、助けることはしない、溺れ…

突然に冷たくなるわけ

僕と過ごすと女の子はみんな笑顔になった。デートの前よりも必ず彼女達は幸せそうに微笑んで、別れ際は少し切なそうな顔をする。 「今日はありがとう、また会おうね」と手を振り送り出して、背中が見えなくなるまで後ろ姿を見送った。そこで僕はスイッチをオ…

誰もが僕を好きになった

僕のやさぐれた魂は、行き場を失い夜の街を当て所もなく日々さ迷う、酔いにまかせて知らない女と口先だけの約束を交わし、今宵の行方を探ってみたりと、善悪の区別もなく勢いに流され夜を過ごす。そのうちに腕を絡めて一時の逢瀬を楽しむ僕は悪の化身で自堕…

海に阻まれた虜の島

月齢の若い月はもう西の空に沈んでしまった。さざめく星の下で独り判別のつかない水平線を睨んでいた。此処ではない何処かへ行ってみたいという逃避願望にかられ、海沿いの駐車場に車を止めて太平洋の黒い塊を眺めていた。 星月夜の浜辺へ過去に捨てた、感情…

不機嫌の記憶

時々思い出すことは、白黒写真に写る少年の笑顔だ。彼は可笑しくないのに微笑んでいた。ぎこちなく笑う少年の強張った表情は、動物園の檻の中に入れられた動物のように臆病で戸惑っていた。なぜ写真を撮る時は笑わなくてはいけないのだろう。楽しくもなく不…

週末の孤独

半分眠りながら、カランから湯船に落ちる水滴の音を聞いていた。ひとつとして同じ音はない、一瞬一瞬過去へと飛びさる今を見送りながら、日付を越してしまった。また終わりの日に近づいてしまったと感嘆する。心も身体も疲れている、大きな欠伸と溜息をつい…

浮気心ではない

素敵で可愛い女の子がこの世界には多過ぎるから誰のことが一番好きかなんて決められないよ。だってみんな魅力が違うのだから、逆に失礼だよ順位をつけるなんて。そんな事を言うとお前は不誠実だといつも叱られる。でもどうして一番じゃなきゃ駄目なのかな、…

一粒で二度愛しい

君が森から拾ってきたドングリを巣穴に籠もって一つ一つ口に入れるとほっぺが落ちるぐらい甘くて切ない味がした。素直に甘えてみるものだね、君が小さな約束を覚えていてくれたことに僕は感動したよ。ホント最近で一番嬉しい出来事だった、世界で一番美味し…

何時も名前で呼びたいんだ

君と会うと日々の垢にまみれた僕でも、人並みの優しさみたいなものを思い出して心が丸くなるよ。君はあどけなく無垢な魂を持つ人で、僕にとって君と一緒の時間を過ごすということは、寛ぎと癒やしを与えてくれる掛け替えのない時間なのさ。君が煌めく景色に…

悪の化身かもしれない

「お前は馬鹿か、お人好しにも程がある」と僕はいつもオヤジに叱られていた。心に垣根を設けないから、上も下も右も左もなく誘われれば誰とでも会うし申し出を断るにも会って相手の顔を見て言うことにしている。問題を有耶無耶には出来ず始末を付けたがる性…

おはようの前に

ミルクレープの様に積み重なった時間に埋もれていた苦い思い出を掘り出して、両手で抱きしめ痛みを受け止めた。そして深くため息をついてまた元の場所に埋め戻す。眠れぬ夜の闇の中で孤独な作業は続けられる。 過去は痛みで、未来は恐怖だ。僕は目の前の生活…

静かに深くそして厳かに

「お誕生日おめでとう」と北風に向かって呟いた言葉は君の元には届かないだろう「君のことが…」と続けて噛み締めるように瞑目し言葉を飲み込んだ、でも隠したはずの君への想いが体中を駆け巡り、気持ちが外へ溢れ出してしまいそうで、僕は慌てて口を閉じた。…

何故音楽を辞めてしまったのですか

明け方の夢に君が出てきた。夕暮れの街を君と僕は歩いていた。ノラ猫に誘われて、ぶらりと入った楽器店で僕はストラトキャスターを手に取り、君の求めるままに、エリック・クラプトンのLaylaを弾いた。本当はベーシストなんだけどと言い訳をしたが、伸びやか…

人生のお師匠さん

「足るを知る」という、考えを教えてくれたのは叔父だった。「奪い合えば足りず、分け合えば余る」とも話してくれた。二つの言葉の意味を、欲張るな求めすぎるな、頃合いを見定めよ、分相応を省みよということだと、僕は解釈している。叔父は粋を極めた数寄…

お話にはならない物語

「私は塔に閉じ込められているの、高窓を見上げて王子様が助けに来てれるのを待っているのよ。早く私を救い出して、これから先は何時も傍に居て、ずっと私を好きでいて、決して嫌いにならないでね」 「待っていて、もうすぐ君を解放するから、捕らわれのプリ…

不義であり文化ではないのは知っている

言い訳をしたところで、相手の感情が晴れる訳ではないので、事実に基づき判明した過ちについて、心を込めて深く謝った。客観的事実とそのために引き起こされた事象について謝罪はするが、自分の行動については覚悟の上でのことなので、迷いはなく反省はしな…

哀しいことばかりではない

古い友人と麻布十番のバーで再会した。久しぶりにたわいのない懐かしい話を色々思い出してたっぷり笑った。いつの時代も僕は僕で、おっちょこちょいでお人好しで、皆に愛されていたみたいだ。人生は捨てたものではないなと思い、世に出た彼の生活と苦労話を…

放浪者の気持ち

「私、中学生の頃に部屋の天井を見上げて、ここは居心地が悪い場所だなって思っていたんだ」 僕も一緒だよ、何時でもここから逃げ出すことを考えているよ。根を張って生きるなんて到底無理で、なんだか落ち着かないんだ。 「そうよね、あれはダメ、これもダ…

君の側にいるよ

悲しみは波のように、飽きることなく寄せては引いていく。君が疲れていて寂しくて、独りになりたくて、心が折れてどうしようもない時、それでも誰かが必要な時には僕を呼んでくれ、僕は君の元へ迎えに行くから。僕が君と会ったら、そうだな二人で海までドラ…

むしゃくしゃしてはいない

誰でも良かった、ただ周りにいたからという理由だけだ。僕の器量では世界は救えず、日本経済の減退を踏み留まらせることも出来ない。偶然に僕の目の前にいた人に向き合い心を割いて、分け隔てなく出来る限りのことを行ってきた。毎日自分の中の何かを配り、…

果たせるかな

正月休みは終わり職場に戻る。六日間逃げ出すタイミングは有ったが、結局常識に縛られたまま淡々と過ぎてしまった。踏みとどまったのは気まぐれか、もしくは自信のなさの現れなのか。きっとまだその時ではないのだ、逃げ出すには、お金と協力者と場所が必要…

幸せなんて頼りにならない

休暇中に家族と長く過ごす時間は、忙しくしている僕には貴重な時間だ。娘の買い物に付き合い、久しぶりに夕食後に妻と向かい合ってチーズと一緒に赤ワインを飲む。妻は優しくて可愛くて素敵な女性だ、僕は時々美しい人だなって見とれてしまうことがあるんだ…

新しい年、新しい心

一夜にして、興奮から静寂に変わる街の空気は冷たくて、賑やかな雰囲気が好きな僕には寂しくて世界中から取り残された気持ちになる。家族が集い新年の訪れを喜び談笑する間、ソファーに座って眠ってしまった。目が覚めた後、世界が変わってしまったことに気…

おおつごもり

A4のコピー用紙を二つに折り左に今年得たもの、右に無くしたものを書き出す。得たものと同時に無くすもの、ただ無くしたもの、思わず得たもの、一年は意外に長くリストは左が35、右が40と今年は無くしたものが多かった。全てはやがて振り返れば良い思い出と…

家庭人

年末年始の連休2日目の12月30日は家族と毎年会食をする日だった。昼食を都内のホテルで採り、車で移動し横浜の街を散策した。山下公園から赤レンガ倉庫まで子供達を先に歩かせ、妻と手をつないで歩いた。風は冷たかったけどよく晴れて気持ちの良い一日だった…

懲りない男

仕事だと嘘をついて、家族でもなく恋人でもない女と師走の街で逢った。初めて顔を合わせた彼女はとても緊張していた。僕は待ち合わせの駅で待っていた彼女に手を挙げて微笑んで始めましてと握手をした。たちまち彼女の顔が赤くなった。歩きましょうと今度は…

お為ごかしの人生だ

酒席の僕は調子の良い酔客で、その場しのぎに好意を撒き散らし、誰にでも優しい男を演じささやかな饗宴をホストとして演出した。その場での役割を心得て、席の雰囲気を盛り上げたと思う。誤解のないように言い訳をするけど、僕はけして楽しんではいない、皆…

Once there was a way to get back homeward

僕が描く誇大妄想は自己抑制を奪い理知的な精神を覆い尽くすほど成長してしまった。信仰にも近い陶酔感に痺れながらやがて訪れる破滅の日を待っている。自分が価値を見いだせないものに能力を費やすことに意味を見出せず。退廃と倦怠を心に抱えながら素知ら…

迷い間違うことが人の業だ

捨ててもよいと思っていても、しがみつく手を振り解くことは悪の所行だ。誰かを選べば誰かを無くす。自分の器量じゃ精神的にも経済的にも全てを抱えることは無理なことだ。僕は馬鹿ではないが夢見がちな男だから一瞬でも、恩讐を越えた楽園で皆で楽しく暮ら…

ハッピーバースディ そして メリークリスマス

ハッピーバースディ そして メリークリスマス 12月24日に生まれた彼女に書く手紙は毎年同じ言葉で始まる。 僕にとってクリスマスイブは彼女の誕生日で、僕らが付き合っていた頃は、必ず僕はケーキを2種類(誕生日用とクリスマス用に)用意して二つのプレゼン…

I miss you

無くしたものを嘆きながら過ごすことも無理をして生きる日々も捨ててしまいたい。でも僕はこんな生き方しか出来ない。君には君の人生があり、主義や主張は尊重すべきだと思う。無くした半分を探す旅はまた振り出しに戻ってしまった、僕の旅は今後も続き、さ…

微笑む君の横で

「プロキオン、シリウス、ベテルギウス」呪文のように唱えては、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス、オリオン座のペテルギウスを結び大三角を確認する。一番近いプロキオンまで11.4光年、近くて遠い時間だ。僕は11年前の過去と11年後の未来(在れば…

マフラーの頃に半袖の季節を想う

濁った瞳にも映る世界は美しく、ひどく危うく儚げで虚ろに見えた。僕の世界の色彩は薄く輪郭がぼやけていて、まるで海の底から空を眺めているように揺らいでいる。浮遊感に戸惑い身体が少し浮いてるようで足元を確認した。まだ地に足はついているし、背中に…

鍵をかけた心の内で

水色の空の下ブルーのコートに袖を通す朝に、ショートカットラブリー君は何を思うの。感情を理性で押し込めた僕は時々堪えきれず、君に話しかけてくだらない冗談を言ってしまう、微笑む君を見ていると、ほっとするんだ。冬の日溜まりにいる猫のように柔らか…

演じているのは誰だ

人間は社会的動物だから立場や関わりの中で幾つもの顔を持つ、感情も性格も立ち位置毎に異なり、場面場面で懸命にそれらしく振る舞っている。僕は投資家、職業人、父親、夫、恋人、友人と相手に求められるままに役割を演じている。そんなことは誰にでもある…

妨げることも人生だ

そもそも人に語れる話はある意味良い思い出で、自分の中では決着がついた話だ。悲惨な過去や苛烈な体験でも話せることは、誰にも迷惑がかからない終わった話だからだ。関係者がまだ生きている、あまりにも陰惨で考えたくもない、話すと死を招く話は墓場まで…

思いやり

僕よりも1日でも長く生きていてくれと彼女に告げると、あなたこそ私よりも1日でも長く生きるのよって彼女は答えた。そんなことを言い合っているうちに、1年2年と僕らの寿命が伸びたら面白いねと話し二人で笑った。僕の命を分けてでも彼女には生きていて貰…

母からの手紙

便箋に肉筆で書かれていた齢八十才の母から届いた手紙は縦書きの文字が右肩上がりで枠をはみ出し曲がっていた。短い手紙は僕の昇進を喜び、僕の頑張りや努力が認められ親として嬉しいと書かれていた。そして少ないけれどと現金が添えられていた。最後の一文…

ぼくを探しに5

「生き残り」という言葉の語感にはネガティブな思いしかない。しかし後悔の気持ちは消えてしまった。仮に人生のある時点に戻りやり直すことが出来ても、僕は同じように立ち振る舞い、結局同じ道を辿ってしまうだろう。それが僕なんだからと悔やむことはない…

ぼくを探しに4

午後の日差しが波頭を光らせていた。照り返しに目を伏せて人気の無い秋の浜辺をゆっくり歩きながら話をした。 「あなたの話は本当なの、あなたはなんでも一生懸命だから想像がつくけど、そんなにお金を儲けて何がしたかったの」 責める訳ではなく彼女の口調…

ぼくを探しに3

最初は彼女からのショートメールだった。12月のはじめに「このままじゃ冬が越せない」と一行だけ書かれていた。彼女の事情聴き電話で長い話をした。以来僕らはメールアドレスを交わし、お互いの誕生日の9 月と12月にメールを送り合うことを習慣とした。僕ら…

ぼくを探しに2

シェル・シルヴァスタインの「ぼくを探しに」という絵本を紹介してくれた彼女は20代の僕にとって最愛の人で、人生に大切なことの大部分を教えてくれた恩人だった。その絵本は無くした欠片を探しに旅に出る話だった。世界を巡り物語の後半でやっとぴったりと…

ぼくを探しに1

君に逢うときは何時も最後だと思って一期一会の覚悟でデートをしてきた。別れ際に見えなくなるまで見送り、振り返ってくれたら嬉しいなって背中を眺めていた。些細な仕草や、笑うと瞳が三日月になるところ、君の全てが可愛いくて自然に微笑んでいた。君は愛…

懇親会の夜

「あなたは堂々としていなさい、そしてトップに立ったからには胸を張りなさい、でも無理せず自然体でいいのよ、信じた通りにやれば良いし、きっと上手くいくわ」 昇格して小さな事務所を任された僕に、彼女はそう勇気付けてくれた。 「明日職場の懇親会があ…